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私の家の前に着いてようやく凜は手を離し、にこりと笑った。
「瑞月ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとね」
「どういたしまして。えぇと、二人とも送ってくれてありがとう。じゃあ、ここで」
「またデートしましょ」
凜はそう言うと、私の額にチュッと唇をつけた。
「ちょっと、凛ちゃん!何するのよ」
「ごめん、ごめん。だって……」
と言いながら、凜はにやにやと笑いながら諒の方に目をやった。
その視線の先を辿ると、諒が眉間に深いしわを寄せて凜を睨んでいる。
すると、凛がもう我慢できないとでもいうように、あははっと笑い声を上げた。
「ごめんね、久保田君の反応があまりにも面白くって。からかいたくなっちゃった」
凛の笑い声に、諒はぷいっと顔を背けた。
すると凜はまだ笑いをこらえたまま、声を潜めて私に言った。
「瑞月ちゃん、あのこと、彼にだけはこっそり話してもいいから」
「え、でも……。凛ちゃんが、自分で話した方がいいんじゃないの……?」
「わたしが許すって言ってるんだからいいのよ。だって久保田君は、軽々しく言いふらすような人じゃないんでしょ?早く誤解を解いてあげないと、かわいそうだしね」
そこで言葉を切り声のトーンを戻した凛は、諒に目をやった。
「瑞月ちゃんのこと、本当に心配なのね。男と一緒にいる、って血相変えちゃうくらいに」
「俺は別に……!」
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