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これ以上は笑いたい気持ちを止めていられないとでもいうように、凜はお腹を抑えた。
「久保田君、そういうのはほどほどにした方がいいんじゃない?あ、そうだ、瑞月ちゃん」
凜は私の傍に寄ると、諒には聞こえないくらいの小声で言った。
「久保田君のあの不機嫌な顔、たぶんヤキモチね」
「ヤキモチ?私たちに?いとこなのに?」
「いとこでもなんでも、瑞月ちゃんに他の男が近づくのは嫌だってことなんじゃないの?」
「どういう意味?だって、諒ちゃんは、私のことを妹みたいにしか思っていないんだよ」
「妹みたいにねぇ……。本当にそうなのかしら?……というか、瑞月ちゃんにはこういう話はまだ早いのかな」
凜はくすっと笑って諒の方に目をやったが、睨むような目を向けられて苦笑した。
「もう退散するわ。おばさんたちによろしくね。久保田君、また学校で会いましょ!」
そう言うと、凜は軽やかな足取りで帰って行ってしまった。
まだ不機嫌そうな諒と二人になってしまい、私は困った。
このまま帰ってしまおうか。それとも、凜が言っていたことを諒に話した方がいいのか……。
どうしたものかと迷っていると、諒がむすっとした顔で私に訊ねた。
「さっき二人で、こそこそと何の話をしてたんだよ」
「えぇと、ちょっと……」
言い淀む私に、諒はさらにムッとした顔を見せる。
「二人だけの秘密ってわけ?」
「そ、そういうことじゃなくて、えっと、ちょっと繊細な話を……」
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