1150人が本棚に入れています
本棚に追加
諒が私の部屋に入るのは、先日から二回目だ。学生時代は遠慮してか、ここに足を踏み入れたことはなかった。
ドアを開けて玄関に招き入れた途端、私は諒に抱きすくめられた。
「一緒にシャワーしよう」
耳元で甘く囁く諒に、私は小さく笑って答える。
「うちのお風呂は狭いから、一人ひとりね」
「ちぇっ」
残念そうに言う諒が可愛く見えて私はくすりと笑った。「可愛い」などと言ったら不満な顔をしそうだから、それは心の中だけにとどめておく。
「それじゃ、俺、先に借りる」
諒は私の頬に一つキスをすると、浴室に消えた。
その間、私は部屋をさっと片付けて、簡単にベッドを整えた。流れと勢いで抱かれたあの日と違い、今夜はこれからそういうことをするんだと思うと、じわじわと緊張感が高まってくる。
私は諒のためのバスタオル、それからずっと返し損ねていた彼の部屋着とタオルを持って、浴室に向かった。扉の向こう側に声をかける。
「諒ちゃん、借りたままだった部屋着とかタオル、ここに置くね。使って」
「あぁ、ありがと」
諒が浴室から戻った後、私もシャワーを浴びる。汗をかく季節ではないけれど、念入りに全身を洗い、浴室を出てからはっとする。
「どうしよう」
緊張していて気が回らなかったか、着替えを用意してくることをうっかり忘れていた。今日着ていた服と下着は、いつもの習慣で洗濯機に入れてしまった。裸のままというわけにもいかないから、ひとまずバスタオルを巻き、髪を乾かしながら考える。
諒ちゃんに目を瞑っていてもらって、その間にクローゼットから着替えを取り出すか……。
私は仕方なくバスタオルを巻きつけた姿のままで、諒が待っているはずの寝室へ向かった。ドアを少しだけ開けて、その隙間から顔を覗かせる。
最初のコメントを投稿しよう!