EP-諒✽5

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EP-諒✽5

結局瑞月の隣で眠ってしまった。いつもよりも少し早く目覚めた俺は、隣で眠る瑞月を静かに眺めていた。安心しきった寝顔が愛おしい。 『幼馴染のお兄ちゃん』から卒業するまで、そして瑞月が俺を男として見てくれるようになるまで、本当にとても長かった……。 俺は瑞月の眠りを邪魔しないように、枕に流れるその髪にそっと触れた。幸せを噛み締めながら、彼女が泥酔した夜のことをふと思い出す。 瑞月ははっきりとは言わなかったが、俺を一人の男として意識するようになったきっかけは、彼女がどろどろに酔っぱらっていたあの夜の、あのことだったと確信している。 あの日、あろうことか愛する幼馴染に襲われた俺は、自制心を失ってしまった。瑞月を欲しい気持ちを止められなくなって、彼女を抱いてしまった。理性を失い、自分の気持ちを開放してしまうことは、一種の賭けだということを、頭の片隅に残っていた冷静な部分では十分に分かっていた。 彼女に決定的に嫌われることになるか、それとも、ただの幼馴染から一人の男に昇格できるかどうか――。 前者だった場合は、今度こそ本当に、瑞月を諦めるしかなくなるだろうと覚悟もした。 ところが、彼女からは俺を嫌悪するような様子も感情も感じ取れなかった。その後も再び彼女を抱いたが、その間中、確かに俺を受け止め受け入れてくれているのが分かった。 それだけのことで、瑞月が俺を男として愛し始めているとは言えない。しかし俺は、そこに僅かな希望が見えたような気がした。 はじまりは偽りの関係だとしても、恋人同士のように振る舞い過ごしているうちに、次第に瑞月の心に変化が生まれて、俺を本当に愛するようになることだってあるかもしれない。 夢で終わるかもしれない、そんなことを考えた。
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