EP-23

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諒はふうっと息を吐き出して、私の手をきゅっと握った。 「説明、まだ足りないところ、あるか?」 私はゆっくりと首を振った。鼻の奥がつんとしている。 「……ない。十分だよ」 「じゃ、答え、くれないか。これでも俺、今ものすごく緊張してるんだ。これ以上返事待たされたら、心臓が止まるかもしれない」 自分自身の緊張を和らげようとしているのか、それとも私が答えやすいように言ってくれているのか――。よく見れば諒の目は笑っていた。 「……はい」 「何が、『はい』なの?」 意地悪な目をして訊き返す諒に、私は言葉を足してもう一度言った。 「諒ちゃんのプロポーズ、お受けします」 「なんだよ。ずいぶんと堅苦しい答え方だな」 諒はあははと笑うと、私にキスした。すぐに唇を離したが、残念そうな顔をしている。 「この続きは、瑞月が完治するまでもう少しお預けだな。それに今日は何の準備もなくて、急なプロポーズになってしまったから、今度改めさせてよ」 「今ので全然大丈夫だよ」 「俺がそうしたいの」 「分かった。ーーあのね、諒ちゃん。ありがとう。すごく嬉しいよ」 私は目を潤ませて諒を見た。 「うん」 諒は満足そうに、幸せそうに微笑むと、少しだけ長く私にキスをした。唇を離すと天井を仰いで、大きなため息をついた。 「あぁぁ。仕方ないのは分かってるけど、今すぐ抱きたいのに抱けないこの辛さ」 私はくすっと笑い、それからはにかみながら言った。 「ちゃんと治ったら、たくさん愛して」 「言われなくてもそのつもりだよ」 抱き合えない代わりに、私たちは互いの温もりを感じ合うかのように手を取り合い、指を絡ませ合った。
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