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その怪しい手紙は、この一日だけで終わらなかった。翌日、帰宅して郵便受けを開けると、宛名書きのない真っ白な封筒がチラシと一緒にそこに入っていた。中の紙をおそるおそる取り出す。二回目のそれにはこう書かれていた。
――久保田さんと別れてください。
三日目以降は封筒に入っていなかった。チラシとチラシの間に、ある時は重なったチラシの上に乗せられて、その手紙は郵便受けに入っていた。
――久保田さんを本当に好きなのは私です。
――あなたよりも私の方がずっと久保田さんのことを愛している。
――あなたさえいなければ久保田さんは私の方を見てくれるはず。
連日郵便受けに入っているのは、自分勝手と思われるようなそんな内容だった。三回目からはそのままの状態で郵便受けにあったから、見たくなくても目に入ってしまった。そして、見ればじわりと背筋に怖さが走る。
諒ちゃんに相談しよう……。
五日目にして、私はようやくそう思った。近いうちに会うという約束はしていなかったから、翌日の昼、彼にメッセージを入れた。
『相談したいことがあるの。近いうちに会えるかな』
その夜やや遅くなって、諒から電話がかかってきた。
――連絡遅くなってごめん。今メッセージを見たんだ。何かあったのか。
その声を聞いたら安心して、つい声が震えてしまう。
「忙しいのに、ごめんね。あのね、見てもらいたい物があって。……次のお休みの時でもいいから、会って話を聞いてもらえないかな?」
――瑞月がいいなら、これからでも全然大丈夫だよ。俺もそろそろ瑞月に会いたいと思っていたから。行ってもいい?
「来てくれるの?」
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