EP-諒✽1

3/4

864人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
「凛ちゃんにはもう会った?」 入学後しばらくして、一度だけ瑞月からそう訊ねられたことがあったが、俺は適当にごまかした。 「いや、実はどの人がそうなのか、ちょっと分からなくてさ」 うちの高校は生徒数が多かったから、クラスが違えば知らない人間がいたとしてもおかしくはない。 言い訳めいていると思いながらもそう付け加えると、瑞月は特に疑問に思った様子もなく、素直に納得したようだった。少しだけ残念そうな顔をした後に、何かを思いついたらしくこう言った。 「今度、みんなで遊ばない?」 「え?」 面倒だし、瑞月があいつと仲が良さそうにしている所なんて見たくない――。 それが本心だったが、俺は理解あるふりをして頷いた。 「あぁ、それも悪くないな」 瑞月が嬉しそうに笑うのを見て心はざわめいたが、結局そんな機会はないままに俺は高校二年生になった。そして、俺にとっては最悪の事態が起きた。高山とクラスメイトになってしまったのだ。そうなってしまっては、関わらないでいることは難しい。 嫉妬心を抱えたまま、高山に普通に接することができるだろうか――。 俺にはその自信がなかった。それなのに、ホームルームでの自己紹介の後、高山は俺の方にわざわざ近寄って来て言ったのだ。 「はじめまして、高山凜です。久保田君が瑞月ちゃんとご近所で、幼馴染だってことは聞いているよ。これからよろしくね」 「あ、ああ。よろしく」 にこやかに笑顔を浮かべる高山に、俺は無理矢理作った笑顔で挨拶を返した。 しかしその数日後、早速俺の気持ちをさらに揺さぶる出来事があった。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

864人が本棚に入れています
本棚に追加