EP-30

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「本当に、申し訳ありませんでした。病院でのお仕事はもちろんやめます。こんなことを仕出かしてしまって、いったいどのようにお詫びしたらいいのか……。お二人にはご迷惑をおかけしました……」 そう言うと、どこかに電話をかけようとしてか、彼女が携帯を取り出した。 しかしそれを止めるように、諒は彼女の手から携帯を取り上げる。 「返して下さい!警察に電話して自首を」 「私が言ったことを聞いていなかったんですか?この先、私たちに関わらないでもらえればそれでいいんです。こんなことで、あなたの大切な人たちを悲しませないでほしいと思うから」 「先生……」 「さぁ、私が言った言葉の意味を理解したのなら、どうかもう帰ってください。私たちの前に二度と現れないで」 そう言って私の傍に戻ってきた諒は、あとはもう振り返ることなく、私のマンションに向かって歩き出す。 彼に寄り添って歩きながら、私はちらりと背後を振り返った。 彼女はふらふらと立ち上がり、深々とお辞儀をしてから、背を丸めながら立ち去って行った。 彼女の姿が小さくなったと思った時、私ははっとして諒の腕を見た。 「痛みは大丈夫なの?やっぱり病院に行こうよ」 諒は無事だった方の手で、おろおろしている私の頬をそっと撫でた。 「そんな顔するなよ。本当に大丈夫だから。とりあえず、お前の部屋へ行こう」 諒の言葉に私は仕方なく頷き、彼の先に立って階段を昇った。 部屋に入った私はすぐに救急箱を用意した。タオルやコットンも準備する。 上着を受け取って、私は彼の前に座り、血が広がったシャツの袖をそっとまくり上げた。消毒液を使いながら血を拭う。 その途端に諒が小さく声を上げた。 「いてっ」 「ごめんなさいっ!」 私は慌てて手を引っ込めた。 諒は苦笑しながら自分の腕を見た。 「少ししみただけ」 血を拭った後の肌を確かめるようにじっと見て、諒は傷跡に指先でそっと触れた。 「やっぱり、たいしたことなかった」 「本当に?」 「本当に。服の上からだったし、女性の力だったからそんなに力もかかっていなかった。上から刺されたらまずかったかもしれないけど、そうじゃなかったし、上手くかわせたみたいだ。若いフリしないで、もっと厚手のコートを着ていたら、こんな傷もつかなかったかもな」
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