EP-3

3/10

872人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
「そうだ、あのさ」 階段に向かおうとして、諒はふと足を止めた。 「あとで何か飲み物持ってきてくれよ。その時、なんでもいいから甘いものもつけてくれないか?万が一成功してたら、そのチョコでもいいや。せっかくだ、厳しい目でチェックしてやる」 「ふんっ。絶対驚かせてやるからね」 「はいはい。じゃあな、瑞月」 「うん。諒ちゃんは、勉強頑張ってね」 私は諒に向かって笑顔を見せた。 栞が痺れを切らしたように私を再び呼ぶ。 「瑞月、早く!お兄ちゃんなんかどうでもいいから」 「今行くって」 私は振り向いて栞に返事をすると、諒の方に顔を戻した。 しかしその時にはもう、彼は二階の自分の部屋の前にいた。そこから私を見下ろし軽く手を挙げると、部屋に入って行った。 その背中が消えるのを見届けて、私は栞の待つキッチンに向かった。 すでにエプロンを身に着けた栞が、テーブルの上に材料や道具を並べていた。 「よし、と、始めようか。ねぇ、栞。チョコとは別に、パウンドケーキも焼いていい?」 「え、作ってくれるの?もちろん、いいよ!だったらあたし、マーブル模様のがいいなぁ」 「いいよ。栞が作る予定のトリュフに使うから、ココアを持ってきたんだ。ちょうどよかった」 そう言いながら、私は家から持ってきた諸々の材料と型を紙袋の中から取り出す。その後は栞に手順を伝えつつ、私自身はパウンドケーキを作り始めた。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

872人が本棚に入れています
本棚に追加