EP-3

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「え……。お兄ちゃん、なんか可哀そう」 「どうして?」 「だって、可愛い幼馴染から、チョコをもらえないなんて」 「そんな大げさな……。だったら可愛い妹の栞があげればいいでしょ」 「だから味見させてあげるんだよ」 「味見って……」 苦笑する私に、栞は真顔になって言った。 「あのさ」 「何?」 「瑞月って、お兄ちゃんのこと、どう思ってるのかなぁ、なんて」 「どうって……」 私は小首を傾げた。 「諒ちゃんは幼馴染で、栞のお兄ちゃんで、私にとってもお兄ちゃんみたいなものだけど」 「それだけ?」 「それだけと言われても……」 私は困って言葉尻を濁す。どうして栞が急にそんなことを言い出したのか謎だと思った。 しかし栞は私の答えを聞くと、小さくため息をついた。 「なんだぁ、そうかぁ。残念だなぁ」 「何が残念なの?」 「こっちの話。さて、と、お茶だったよね。仕方ない。受験生のお兄ちゃんにも持っていってやるか」 「それなら、私、持って行ってあげるよ。栞のチョコ味見してもらうんでしょ。このパウンドケーも、一緒に味見してもらおうかな」 栞はくすっと笑った。 「瑞月が作ったものなら、絶対に美味しいって言うよ。私のチョコの存在が霞んでしまいそう。――今、紅茶淹れるね」 私は栞が用意した紅茶を小さなトレイに乗せる。その隣の小皿には、トリュフチョコとパウンドケーキ。私は慎重な足取りで階段を上がっていった。
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