EP-3

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諒の部屋の前に着いた私は、ドアを静かにノックした。 少しだけ待っていると、諒が出てきた。 「お、できたのか?」 「うん。栞のチョコと、私が作ったパウンドケーキ。食べたら後で感想教えてね。はい、これ」 私はそう言って、トレイごとお茶とパウンドケーキを諒の前に差し出した。 しかし、諒はドアを開けて支えながら言う。 「そこのテーブルに置いてもらってもいい?」 「うん。えぇと、お邪魔します……」 小さな頃にはよく入ったことのある部屋だ。しかし、諒が中学生になって一緒に遊ぶことがほとんどなくなってからは、ずっと足を踏み入れたことがなかった。思っていたよりもきれいに片付いていることに、少し驚く。 諒はどちらかというと綺麗好きな方だったことを思い出しながら、私はおずおずと彼の部屋の中に足を踏み入れた。諒が目で示した小さなテーブルの上に、そっとトレイを置く。 「それじゃ、行くね」 「え、もう行くの?味見の感想、聞いていかなくていいのか?」 「えぇと、後でいいよ」 「ちょうど休憩にしようと思っていたところなんだ。これを食べ終わるまででいいから、少し話し相手になってくれよ」 「でも、邪魔でしょ?」 「邪魔?そんなわけないじゃん。たまには瑞月の話も聞きたい。学校のこととかさ」 「私の話なんて面白くもないけど……。それじゃあ、まぁ、失礼します」
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