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諒はぷっと吹き出した。
「なんだよ、その固い態度。ついこの前までは、栞以上に俺の後をくっついて歩いていたくせにさ」
「この前って言うのは、ものすごく小さい時のことでしょ?さっきも言ったけど、私、もう子どもじゃないんだけど」
「でも、大人になりきるのは、まだまだ先の話だよな」
「諒ちゃんだってそうじゃない。まだ高校生なんだから」
「それはそうなんだけどさ」
諒はくすっと笑うと、テーブルを挟んで私の前に腰を下ろした。
「どれどれ。お、うまそう。焼きたて?瑞月が作ったのか?今?」
「うん。本当は明日の方が、もっとおいしくなってると思うんだけどね。残った分は置いて行くから、おじさんとおばさんにも食べてもらってね」
「ありがとう。それで、こっちは栞が作ったやつ?あいつ、ちゃんと作れたのか?」
「初めてとは思えないくらい、上手にできてたよ。なんかね、作ってあげたい人がいるみたいでね。すごく丁寧に真剣に頑張ってた。あ、っと、今の話、私が言ったってことは、栞に絶対に内緒にしていてね」
「ふぅん……」
諒はぱくりとケーキにかぶりつきながら、私をじっと見た。
「何?もしかして、美味しくなかった?」
不安に思い訊ねると、諒は頭を振る。
「いや、すっごくうまいよ。マーブル模様っていうの?これも綺麗にできてるし。ほんと、瑞月ってすごいよな、と思って見てたんだよ」
真面目な顔で言われて私は照れた。
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