EP-1

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諒がドアをノックして入って来たのは、栞の部屋で宿題を広げたタイミングだった。 「二人とも、飲み物持ってきたぞ」 何か月ぶりかに会う諒は、背がぐんと伸びていた。 「ありがと」 栞はグラスの乗ったトレイを受け取り、テーブルの上に置く。それから壁際に立ったままだった諒に向かって、怪訝な顔を向けた。 「何?なんか用でもあるの?」 「なんだよ、そんな風に邪魔者扱いしなくたっていいだろ」 「だって、これから瑞月と宿題やるからさ。手伝ってくれないなら出てってよ」 「ったく、可愛くないやつ」 鼻の上に軽くしわを寄せて、諒はくるりと背を向けた。 それを私は慌てて引き留める。 「待って、諒ちゃん!あのね……」 「ん?」 ドアの前で立ち止まった諒は、不思議そうな顔をして私を見た。 私はトートバッグの中に手を入れて、リボンシールを貼った小さな紙袋を取り出す。それを諒の前に差し出して、にっこり笑った。 「はい、これ。高校合格おめでとう」 「え?」 諒は驚いたように目を見開き、私の手元を見た。 「高校合格のお祝いに作ってみたんだ。普通のクッキーなんだけど、良かったら食べてね」 「へぇ、瑞月の手作り?すごいなぁ。どれどれ、早速」 諒は私の手から紙袋を受け取って中を覗き込み、クッキーの一枚をそっと取り出した。
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