EP-7

1/10

952人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ

EP-7

幼馴染たちの部屋を訪ねる時は前もって約束をしていて、時間もだいたいは毎回同じぐらいだ。そしてその日も、いつものように夕方の六時過ぎに、彼らの部屋に着いた。 ドアチャイムを押して、私は玄関のドアが開くのを待つ。いつもであれば、ほぼすぐに栞か諒が顔を出すのだが、この時はどちらも出てくる様子がなかった。 「今日、って言ってたはずだけど、聞き間違えたかな」 首を捻りながらもう一度ドアチャイムを鳴らしてみる。しばらくして、ようやくロックをはずす音が聞こえた。ドアが開いて、諒が顔を出す。 「諒ちゃん、こんばんは」 「うん。待たせて悪かったな。……あのさ、ちょっとだけ待っててくれる?」 「え?うん……」 その顔に珍しく動揺の色が浮かんでいるのを見て、私は眉をひそめた。 何かあったのだろうか――。 そう思った時、奥の方からフローラル系の甘い香りが漂ってきた。これまで彼らのこの部屋では嗅いだことのない匂いだ。 ルームフレグランス?というよりは、香水?……まさか、女の人? 私はそっと諒に声をかけた。 「お客さんだった?私、帰ろうか?」 「いや、客とかそういうのじゃないから」 諒が否定の言葉を口にした時、廊下の奥の方から女性の声が聞こえてきた。 「久保田君、妹さん?」 私は弾かれたように、その声の方へ目を向けた。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

952人が本棚に入れています
本棚に追加