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泣いてしまわないだろうか――。
私はつい、彼女のことを心配してしまった。
「どうして私とは付き合えないの？私じゃだめなの？」
少しでも希望はないかとでもいうように、彼女は縋るような目で諒を見上げた。
「だめですね」
「だから、どうして！」
諒は肩で息をつくと、彼女を真っすぐに見下ろした。その目はひどく冷たい。
「本当は言いたくなかったんですけど……。付き合っている人がいるんです。その人に迷惑をかけたくないって思ったから、黙っていただけ」
「な、な……」
すぐには言葉が出なかったらしい。彼女は口をパクパクさせた。
「う、嘘よ。私を諦めさせるための嘘なんでしょ？だって、久保田君のことを聞いた人たち、誰もそんなことは言っていなかったもの！それならそうと、言ってくれれば良かったじゃない！」
「そう言われても……。周りが知らなかったのは、特に聞かれたことがなかったから、話したことがなかっただけですし。それにあなたに言ったら、俺の彼女に嫌がらせしそうだったから。いや、あなたのことだ、彼女のことを調べるようなことをして、絶対に何かするに決まってる」
最後は断言するように言い切って、諒は表情のない冷たい顔を彼女に向けた。
ひんやりとした諒の態度に、彼女はさすがに怖気づいた様子を見せたが、それでも声を振り絞るようにして言った。
「だ、誰よ。それは私も知っている人なの？」
諒は少しだけ考える素振りを見せてから答えた。
「知っていると言えば、知っていることになるのかな」
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