EP-8

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「分かった」 諒は観念したように言った。 「仕方ない。絶交されるよりましだ。それで許してもらえるんなら、頑張って食べるよ……」 「ということで、ニンジンサラダやニンジンの煮物、ゴロゴロニンジン入りカレーなど、ニンジンが毎回出ます」 「できれば食べやすいように頼むよ……」 はあっとため息をつく諒の顔を見て、私はようやく頬を緩めた。 とは言え、それからしばらくは諒と顔を合わせにくかった。それでも、栞に誘われれば遊びに行き、頼まれれば夕ご飯を振舞った。 ただし、毎回必ず何かしらの形でニンジンがテーブルに並ぶことになったのは、宣言した通りだ。 それが何回か続いたある夕食の席で、栞が不思議そうな顔で私に訊ねた。 「最近よくニンジン出してくれるよね。美味しいけど」 私はにこっと笑って涼しい顔で答えた。 「だって、ニンジンって体にいいでしょ?それに、諒ちゃんももういい大人なんだから、いつまでも子どもみたいなこと言っていないで、克服した方がいいかなって思ったのよね」 諒は私のもっともらしい言葉を苦々しい顔で聞いている。私との約束通り、今日は、ほとんどニンジンであるサラダ、キャロットラペをちびちびと口に運んでいた。 それを見ながら私は満足する。 ――だってこれは、乙女の唇を無理に奪ったペナルティなんだから。 食後、食器を片づけていると、諒が傍に寄って来た。栞は今、お風呂を掃除しに行っていてここにはいない。 「瑞月って、結構性格悪かったんだな」 「絶交しなかっただけマシでしょ?」 私はぷいっと顔を背けた。
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