EP-8

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「確かにそうだな。これくらいで済んで良かったよ」 苦笑を浮かべる諒に、私はふと思い出して訊ねた。 「それで、あの後あの人は?」 「あぁ、おかげでぱったり。ほんと、助かったよ」 「それならいいんだけど……」 私には気になっていることがあった。諒が私とつき合っているという例の狂言話は、あの人のところで止まっているのかどうかだ。 「俺に彼女ができたって話は、周りには知られてしまったんだけど、それが誰かまではみんな知らない。会わせろって言われても、適当にはぐらかしているし。ひとまず俺にとっては、いい虫よけになってる」 「そう……」 私は諒の顔をしげしげと見た。 「何?」 「諒ちゃんに、早く本当の出会いがあればいいのに、って思ってさ。そしたら今回みたいに、私で間に合わせるようなことをしなくても良かったのに」 「間に合わせるって、なんだよ、それ」 「だって、たまたまあの場に私がいたから、ってことでしょ?いろんな意味で」 諒は脱力感一杯の顔で私を見下ろした。 「あのなぁ……。俺は」 諒が言いかけた時、栞が戻って来た。 「お風呂、準備できたよ。瑞月、たまには先に入ったら?」 「そう?いいの?」 「もちろん!お兄ちゃんはいつも通り、最後でいいよね」 諒がため息交じりに妹に答えた。 「それでいい」
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