EP-9

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EP-9

幼馴染たちの部屋へ通う生活は、それからも一年ほど続いた。しかし、各々の環境の変化に伴って、幼馴染たちの部屋で三人そろって食事をする機会は少しづつ減っていった。 私たちの仲が悪くなったわけではない。栞に恋人ができたことと、諒の医師国家試験に向けた勉強がいよいよ本格的になりつつあったことが、その主な理由だった。 「気にせずに今まで通り遊びに来て」 そう言ってくれる幼馴染たちに笑顔で頷きはしたが、気にしないわけにはいかないと思った。 栞について言えば、週末は恋人と過ごしたいんじゃないかと思った。実際、栞と週末の予定が合うことは減っていたし、彼女は週に二回ほど家庭教師のアルバイトも始めていたから、平日も忙しそうだった。諒も大学の授業に加えて試験勉強もあったから邪魔したくもなく、これまでのように頻繁にも行きにくいと思った。 とはいえ、二人の食生活が心配で、時々は作ったものを持って行ったりした。けれど、普段は栞が頑張って作っているようだった。料理上手な恋人に教わった料理を、練習のためと言って諒にも出して一緒に食べたりしているらしい。 二人がそれなりに食事をしているようでとりあえずは安心したが、もう自分の出番はなくなりつつあるのだと思ったら、少し寂しい気持ちになった。 こうして、幼馴染たちと会っていた分の時間がぽっかりと空くようになった。だから私は、大学の料理サークルというものに入ってみた。そこで新しいレシピを覚えたりするのは楽しかったけれど、以前のように披露できる場がほとんどなくなっていたから、作っていてもあまり張り合いがなかった。
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