EP-9

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子どもの時からずっと一緒だった私たちだけれど、この頃はちょうど、それぞれがそれぞれの道を歩き始めた時期だったのだろう。 無事に医師免許を取得した諒は研修医となって、ますます多忙になったようだった。大学四年生となった私と栞も、就職活動と卒業論文の執筆でなかなかに忙しい日々を送ることになった。その後、無事に大学を卒業した私たちは地元には帰らずに、四年間住み慣れたこの街の企業にそれぞれ就職した。私は建築業界、栞は金融業界だ。そしてその頃、凛は小さなスナックを開いた。 就職活動を始めた頃、両親から地元に帰って就職したらどうかと期待を込めた顔で言われた。しかし私は、あと何年かは自分一人で頑張ってみたいと思っていた。恐る恐るそう口にしてみると、反対するかと思っていた両親は寂しそうな顔をしながらも、「瑞月も大人だから」と、予想以上にあっさりと言ったのだった。 就職してからの私は慣れないことの連続で、毎日を余裕なく過ごしていた。幼馴染たちや従兄たちとは近くに住んでいるというのに、日ごろの雑事に追われてなかなか会えないでいた。メッセージのやり取りで近況を伝え合ってはいたけれど、実際に顔を合わせるのは年に数回程度と稀になっていた。
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