EP-諒✽3

4/6
前へ
/158ページ
次へ
「何よ、あんなことって。なんかあったの?」 「あ、いや、その……」 俺は目を泳がせた。うっかり口が滑ってしまった。 大学時代、俺はある女性に付きまとわれていた。しかし、彼女に諦めてもらうため、すでに巻き込まれてしまっていた瑞月に、恋人のふりをさせたことがあった。その時、証拠を見せろと言われて、俺は瑞月にキスをした。 ファーストキスだったのに、と涙目で言う瑞月から、絶交かペナルティを受けるかのどちらかを選べと提示された。 当然、絶交なんて耐えられない。俺はその二択の中ペナルティを受け入れて、なんとか瑞月に許してもらうことができたのだった。 その後、瑞月は時折気まずい顔を見せることもあったが、それだけだった。そのキスを境に、少しくらいは俺を男として意識するようになってくれるかもしれないと期待したが、結局――。俺は、彼女の幼馴染みという立場から卒業できなかった。 俺は小さくため息をつきながら、瑞月の方に視線を飛ばした。今は、栞を含めた女性たちと一緒に笑い合っているのが見えて、ほっとする。 「それでどうするの?このまま気持ちを伝えないで、完全にすっぱりと諦めちゃうわけ?」 頬杖をついた凜がからかうように、けれど心配そうに言った。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1002人が本棚に入れています
本棚に追加