EP-10

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EP-10

恋人は多田将司といった。付き合い出してから一年がすぎた。 就職して4年目となったこの春に、私は総務課へと異動したが、彼とはその前に所属していた営業部で一緒だった。事務的な部分で二年ほど、私は彼のサポートをしていた。 その間彼の傍で一緒に仕事をするうちに、気がつけば彼に惹かれていた。だから彼が告白してくれた時、私はそれをすんなりと受け入れて、交際することを決めたのだった。 彼は私より五つ年上だった。仕事の時もそう感じたけれど、やっぱり彼はプライベートで付き合うようになってからも、私のことをいつも気遣ってくれるような人だった。 初めてのデートの時、男の人と付き合うのが初めてだと言う私に、彼は驚きつつも納得したような顔をして笑った。 「大原さんって、なんというか……やっぱり、大事に育てられてきたって感じなんだね」 「そう見えますか?」 「あぁ。だから、ゆっくりと付き合ってお互いを知って行こう」 そう言われて安心した私ではあったが、昼のデートを何度も重ね、夜に会うことも増えるようになるまで、さほど時間はかからなかった。彼に身を委ねることになったのも、至って自然の流れだった。 将司は優しかったし、一緒にいて楽しかった。私を大事にしてくれているという実感もあった。だからこのまま行けば、私はきっと将司と結婚することになるのだろうと思っていた。幸せであるはずの近い将来を思い描き、私はその日が訪れることを少しも疑っていなかった。 しかし――。
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