EP-10

6/10
前へ
/162ページ
次へ
「どうしたの。今日の瑞月、なんか怖いんだけど」 「怖い、かしら」 「あぁ、怖い。いつもと全然違う」 将司は眉をひそめ、やや緊張した面持ちで私の対面に腰を下ろした。 私は彼の目を真っすぐに見ると、単刀直入に話を切り出した。 「幸恵さんとはどういう関係なの?」 「な、何だよ、急に……」 本人は平静を保とうとしていたようだったが、それは失敗していた。明らかに動揺しているのが分かるほど、声が震えている。 「確認だけど、私たちって、付き合っているのよね?そうだとすると、将司さんは浮気をしたということになるのかしら?」 将司の目が泳いだ瞬間を、私は見逃さなかった。 「見てしまったの。昨日の午後。倉庫で、将司さんが女の人と一緒にいるところを。あれは別れ話だったのかしら?……ねぇ、将司さん。私と付き合っているのに、あの人に手を出したということなの?あんなにも抱いてくれたのに、って言っているのが聞こえたわ」 「っ!」 将司の顔がみるみる青ざめた。 「いたのか、あの時……」 「否定、しないのね」 「あ……」 私は膝の上で拳を握りながら、ゆっくりと瞬きをした。 「別れるわ。合鍵は返します」 私はテーブルの上に、鍵を置いた。 「あなたと過ごした時間は早く忘れるように努力しようと思う。いつかはあなたと結婚するのかも、なんて夢を見ていたこともあったけど、それが夢で終わって良かったのかもしれないわね。……とにかくそういうことだから。将司さん、今までありがとう」
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1015人が本棚に入れています
本棚に追加