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店員を呼び注文を済ませたところで、絵理が「でも……」と溜息をついた。
「私なら、アナフィラキシーショックなんて苦しい方法で自殺したくないわ」
杏がムッとしたことにも気付かず続ける。
「死に顔は苦悶の表情を浮かべ、青鬼みたいだったって聞いたわ。怖いわね。食物アレルギーがなくて、本当によかったわ」
「何でも食べられるって幸せなことよね。うちの子も好き嫌いなく何でも食べてくれるし、助かるわ」
「子供には何でも食べて、すくすく成長してもらいたいわね」
そこへ店員がやってきたので話は中断した。
「お待たせしました。オーガニックコーヒーとフェアトレードバナナのヴィーガンジェラートでございます」
その時、絵理が顔を顰めたかと思うと、大急ぎでハンカチを顔に当て、ハックション! と特大のくしゃみをした。
「ごめんなさい」
バックを掻きまわして噴霧薬を取り出すと、片手で覆い隠しながら鼻の穴に噴射する。
「今日は特に酷いわ。花粉の粒子が目に見えるようよ」
「大変ね」
杏がコーヒーにプラントベースミルクを垂らしながら笑う。
「アレルギーにも色々あるわね。さしずめ私は、肉食アレルギーね」
「ヴィーガンレストランが幼稚園の近くにあってよかったわよね」
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