3人が本棚に入れています
本棚に追加
ショートケーキとジュースを載せたお盆を手に部屋に戻ると、バニーさんは机の本棚にちょこんと腰かけて待っていた。
階段を上ってくる間、やっぱり夢だったかも知れないと考えていたので、とても嬉しかった。
「素敵なお部屋ね。なつめさんのお家はお金持ちなの?」
「パパは一応、会社の社長さんです」
謙遜してみせたけど、誇らしかった。パパは大きな貿易会社を経営している。
「どうぞ召し上がれ」
バニーさんはひらりと軽やかに本棚から飛び降りると、ケーキのイチゴを両手で抱え上げた。むしゃむしゃと半分くらい食べて、小さなげっぷをした。虫のおならくらいのげっぷだった。
「なつめさんは読書家なのね」
うんと背中を逸らし、本棚を見上げて言った。
「パパが外国に行くたびに、勝手に買ってくるんです。でもこの本は一番のお気に入りです」
大判の写真集を、腕に力を込めて取り出した。
「英語は読めないけど、外国の写真がきれいだから」
アルプスの山々やオーロラの写真を見せてあげると、バニーさんは感嘆の声を上げた。
「この方、なつめさんのお母さん? とても優しそうな人ね」
机に飾ってあるママの写真を見て褒めてくれる。
最初のコメントを投稿しよう!