バニーさん(ダークファンタジー 5分)

3/6
前へ
/36ページ
次へ
 ショートケーキとジュースを載せたお盆を手に部屋に戻ると、バニーさんは机の本棚にちょこんと腰かけて待っていた。  階段を上ってくる間、やっぱり夢だったかも知れないと考えていたので、とても嬉しかった。 「素敵なお部屋ね。なつめさんのお家はお金持ちなの?」 「パパは一応、会社の社長さんです」  謙遜してみせたけど、誇らしかった。パパは大きな貿易会社を経営している。 「どうぞ召し上がれ」  バニーさんはひらりと軽やかに本棚から飛び降りると、ケーキのイチゴを両手で抱え上げた。むしゃむしゃと半分くらい食べて、小さなげっぷをした。虫のおならくらいのげっぷだった。 「なつめさんは読書家なのね」  うんと背中を逸らし、本棚を見上げて言った。 「パパが外国に行くたびに、勝手に買ってくるんです。でもこの本は一番のお気に入りです」  大判の写真集を、腕に力を込めて取り出した。 「英語は読めないけど、外国の写真がきれいだから」  アルプスの山々やオーロラの写真を見せてあげると、バニーさんは感嘆の声を上げた。 「この方、なつめさんのお母さん? とても優しそうな人ね」  机に飾ってあるママの写真を見て褒めてくれる。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加