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翌日、藪をぶんぶん飛び回りながら何かを探しているアテナを見かけた。
「おお、アテナか。昨日の赤ん坊はどうした?」
「ははうえがちちをくれまして、いまはすやすやねむっております!あにうえとこうたいでめんどうをみることにしたのです!!」
「ふむふむ、感心感心。それで、お前は何をしているんだ?」
「へびをさがしているのです!!」
「蛇?」
「きのうあかちゃんをみつけたとき、へびがかごにはいりこもうとしていたのです!そしたらあかちゃんがへびをつかんでぶんぶんふりまわして、えいってちぎってきゃっきゃとわらっていたのです!きっと、このこはへびであそぶのがすきなのです!!」
「……ちなみにどんな蛇……?」
「なんかね、2めーとるぐらいで、ぴかぴかしてて、みどりいろっぽいの」
「そんなでかい蛇ぶん回して遊んでたのか?」
なんだか普通の赤子とは思えんのだが……よくよく見てみると誰かに似ているような気がする。
「籠の中に何か身元の分かるもの入ってなかったのか?」
「う~んう~ん……そういえばおくるみにじゅうしょとなまえかいてあった!!」
「ちょっと持ってこい」
どれどれ……テーバイ城内アムピトリュオン方、ヘラクレス……って、これワシが夫に化けてアルクメネに産ませた子じゃないか。なんで野原に放置されとったんじゃ?
「とりあえずお家に帰してきなさい」
「え~っ、かわいいのに」
「こやつはテーバイに亡命中のミュケナイの王子だぞ。誰がさらってきたか知らんが、今頃親が必死に探しておるじゃろう」
「おうじさま!!それはたいへんです!すぐかえしてきます!!」
アテナはすさまじい勢いですっ飛んでいった。もちろん物理的に。
その後、家に帰されたヘラクレスはすくすくと成長し、義父を助けて戦争で大活躍したり、うちのヘラを怒らせて狂気にとらわれたりするが、それはまた別のお話である。
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