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「あなた、アテナちゃんっていうのね。実はあたしも戦の女神なの。よろしくね」
柔らかく微笑むエリスの姿にワシもヘパイストスも震えが止まらない。
「……嘘こけ……お前は戦じゃなくて不和と争いの神じゃろう……」
「な……何を企んでるんだ……アテナが危ない……」
ワシら二人の危惧をよそに、アテナは嬉しそうに満面の笑みで姉の手をとりぶんぶんと振った。
「もしかしてあなた、最近ゼウスお父様がお産みになったという女の子かしら?」
「ちちうえがうんだわけじゃないぞ。あてながちちうえのあたまのなかでそだってしまって、ちちうえのあたまがわれそうにいたくなったのであにうえがおのでかちわってくれてでてきたのだ!!」
「う~ん、ちょっと意味がわからないかな?」
怒涛のひらがなに困り顔で首を傾げるエリス。こうして見ていると、ただの穏やかで優しそうなお姉ちゃんキャラの少女にしか見えないのが恐ろしい。
「とにかく、そういう事ならあなたはあたしの妹だわ。あたしはエリス。ゼウスお父様とヘラお母様の間に最初に産まれた双子のうちの妹よ。同じ戦の神でもあるし、仲良くしましょ」
「もちろんなのだ!!よろしくあねうえっ!!」
満面の笑顔で姉の手を両手で握りしめ、飛び回りながら心底嬉しそうにぶんぶんと振るアテナ。
エリスのやつ、一体ナニを企んでいるんじゃろう……ヘパイストスの台詞じゃないが、さっきから悪寒が止まらないのはタチの悪い風邪をひいたわけではないのだと思う。
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