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分析
美海音を追って慌てて店を出た利蔵は、早足で歩いていく美海音の肘を後ろから掴んだ。
「おまえ、自分の立場判ってんのか! 確かにあいつらは鬱陶しい存在かもしれんがな、何も自分から喧嘩売ることないだろうが!」
「へえ、喧嘩っぱやい利蔵さんに、そんなこと言われるとは思わなかった」
「冗談言ってる場合か! あいつらのタガが外れて、ほんとにヤバい真似してきたらどうするつもりだ!」
すると美海音が、手に持ったビニール袋をずいと利蔵の鼻先に突き付けた。
「もう、充分ヤバいわ。これ、警察に持ってって」
「は? 警察?」
美海音の唐突な言葉に、利蔵はつい今しがた怒鳴っていたことも忘れて、目を白黒させた。
「そう。利蔵さん、元警官なんでしょ? 中に知り合いとかいるよね?」
「知り合いって、そりゃ腐るほどいるが……それがどうした」
「これを調べてほしいの。えーと鑑識? 科捜研? 何だかよく判んないけど、とにかくそういうの調べるところに。利蔵さんが頼み込めば、こっそりやってもらえるでしょ?」
「持ってってどうすんだよ。コーヒー豆の産地でも知りたいのか」
美海音はすっと表情を引き締めると、にわかに声を潜めた。
「――違う。これにアーモンドが入ってるかどうか調べてほしい」
「アーモンド? 何の話だ、いったい」
美海音はちょいちょいと手招きをすると、利蔵の耳元で何事か囁き始めた。
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