3日目の朝

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3日目の朝

 ニンゲンというものに特殊な形態や能力が備わったのは、隕石が地球に衝突した100年前、謎の疫病がらしい。  生まれてこのかた、ケモミミというかオオカミの耳とシッポがあり、定期的月の運行に合わせ体調がダウンする。まあなれたけど。  外見はオオカミっぽいのだが、性格はおとなしい。はずだ。人は見てくれでない。僕は自分で言うのもなんだけど、おとなしいのだ。  今日は入学して3日目。海側の駅から遅刻坂という坂道を登っていく。駅はホームから朝の海が見える。駅から日すぐ海水浴場と、津波避難場所の看板も大きくある。今日は風が少し強く潮の匂いがする。  背後から、大声がする。うちのガッコの女子? 「いっけなーい、ちこくちこくぅ」 そう喚きながら、魔法のほうき、正確には通学用飛行ホウキだ。まだ間に合うハズ。げんに僕の後ろにも生徒が坂道をヒイヒイ登っている。  と、そのとき彼女は無人配達ドローンと衝突になった。ドローンは危険を回避、彼女も軽い見のこなしで衝突をまぬがれた。 「なにやってんだ」  そう思ったときだ。通路の斜め上上空から声が。 「時間みろ、ここにいるものは教室にこい」  初日に話を聞いていたが、山道でケガする生徒出さないために上空からドローン飛ばして見張っているそうだ。  この日朝の時間お小言を頂戴し、神妙に教室に向かった。一時間目は数学の時間だ。タブレットと教科書、ノートを出し、先生のスクリーンと黒板を使い、話している内容がどこかの銀河系の言語のように聞こえて、そして窓から聞こえてくる波の音と潮の香りで途中から眠りについたようだ。  目が覚めたのは、僕の名前を大声で叫ぶ女子の声だった。 「神崎ぃぃ、はいるか」 数学で熟睡した目覚めがこれとは。テスト、あ、んーとか思いつつ。 「神崎ぃぃ、」 「おい、あれ彼女」 まだなじんでないクラスの前の席にいる、えと浜田くんだっけ。 「いや、朝方職員室によばれて、アイツだけオコゴト長かったみたい」 「なんで」 「通学用飛行ホウキ、制限抑制魔札はずしてたってよ」 「いるんでしょ」 「あー、はい。けどせめて自分から名前なのって、せめてさんづけしてよ」 「私は浅田だ。話がある」 「なに」 「お前、生徒会に立候補して変えるのだ」 「浅田さんだって、なんで」 「ぴんときたから、私も出るから」 「は、はぁああー」  これがボーイミーツガールではなく、アイツとのおバカとアホの全力疾走するセイシユンュンッの始まりとはそのとき知らなかったのだ。  僕は、なんとなく空だけ見ていたかった、そのときは。けど彼女とのタックを組んで、いろいろを始めていくとはその時は考えてなかったのだ。
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