新生活

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 苦虫を嚙み潰したような表情というがピッタリだろう。私を見る顔は、綺麗なお顔が台無しの鬼の形相で睨んでいた。  しかも、社長のことを右京様と言っていた。初日にしてこの状況とは勘弁してほしい。    私も、好きで受付から社長秘書になったわけでもなければ、ましてや取り入ったわけでもない。代われるものなら代わってほしいくらいだ。  吉本さん達は一次審査を通過していないから、ミスコンが社長との婚約契約とは今でも知らないのかもしれない。知られたらどうなってしまうのか、想像しただけでも恐ろしい。   「私に言われましても……」    どうしたらいいのよ。外崎さんはまだ戻って来ないの? なんとかしてよ! と内心で悪態をついてもどうなるわけもなく。    そこへ救世主登場! ではなく、さらに話をややこしくしそうな人物が現れた。 「この書類」と、社長室から秘書室に続く扉を開けて社長が入ってきた。そしてこちらに視線を向けた瞬間に、表情が険しくなり機嫌が急降下したのを悟る。  
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