新生活

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 受付の仕事に誇りを持っていたし、やりがいを感じていたけれど、半日ですでに社長秘書としての仕事の面白さを感じた。私達が知らない経営陣の仕事を目の当たりにして、少しでも役に立てるように良い環境を作りたいと思える。  お昼を過ぎた頃、社長室へとつながる扉が開いた。   「メシ」 「あっ、もうそんな時間になっていましたか。って、社長は普段から昼食は食べないですよね?」 「腹減った」 「そうですか。ではなにか買って来ましょうか? 松田さんはどうされますか?」 「私ですか? 私はお弁当を持ってきています。どこか食べられる所はありますか? 食堂へ行った方がいいですかね?」 「ここで食べていただいても構いません。社長は何がいいですか?」 「やっぱり要らない」 「え?」 「へ?」  腹減ったとやって来たのは何だったのか? 私の驚きをよそに状況を理解したのか外崎さんは、社長室の扉が閉まると同時に盛大に噴き出した。 「ブブッ、プアハハハ」 「どういうことですか? 社長はお腹が空いたんですよね?」 「社長のことは放っておいてください。不器用なんです」 「はあ……(不器用とは?)」 「私は少し出てきますので、遠慮なく昼食にして下さい」
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