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「失礼します!団長、放火犯を引っ捕らえました」
気絶した彼女を抱き上げ、何処かで休ませようと辺りを見回した矢先、そんな言葉を添えて若手の騎士が駆け寄った。
「分かった。マリアを頼めるか?」
「はっ!御婦人の身柄は責任を持ってお預かりします!」
二つ返事で騎士は応え、差し出した彼女を丁重に抱きかかえる。
毅然と踵を返し、長い外套を揺らすその姿は国家の英雄たる覇気を纏っていた。
「…放せ!俺は被害者なんだぞ!」
村の外れ、騎士達に取り押さえられて喚き散らす汚らしい無精髭の男とヴォルフレンは対峙した。
村人達の証言により判明したが、男は以前マリアの隣に住んでいた旦那だった。
放火の理由は逆恨みだった。
「あの魔女がいなきゃ俺は嫁とも別れずにずっとあの家に住んでいられたんだ!あの魔女が娘を攫った所為で嫁は可怪しくなったし、全部あの魔女が悪いんだ!」
そう豪語する男だが、問い詰めに来た村人達は何を言うかと怒りを露わにした。
「そもそも、お前がマリアさんの野菜や薬草を盗んだ所為だろ⁉」
「あんたの嫁さんは元から病気だったじゃねえか!」
「お前の手癖の悪さが原因だろ!人の所為にすんな!」
村人達は一斉に反論。
ここには誰一人、魔女マリアの敵は居なかった。
「全くの身勝手さだな…。マリアや皆から話は聞いている。放火は如何なる理由があったとて火刑だ。過去の窃盗の罪も合わせて処分しろ」
溜息混じりにヴォルフレンは告げ、問答無用と踵を返す。
極刑の通告に男が戦慄する中、騎士団は泣き喚く男を容赦無用で処刑場へと連行した。
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