髪洗い

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髪洗い

 結局、ヴォルフレンが持って来たお礼の品は全て有り難く頂戴した。  そうと言うのも食べ盛りな娘がいる為、日持ちする燻製肉は大変有り難く、そろそろラプンツェルに新しい服を仕立てるに布地も必要になっていた。  毛皮に至っては冬場、喉から手が出るほどに欲しかった品である。 「閣下ったら、律儀なんだから…」  早速頂いた布地を裁断してラプンツェルの新しい服を繕いつつ、マリアは困ったように肩を竦める。  貧しくはないが裕福でもない母子二人の暮らしには勿体無いほど良い布で、その量は二人合わせても二着は余裕で作れるほどだった。 「ねえ、お母さん。もしかしたら大公様、お母さんに恋をされてるんじゃない?」  戸棚に入るよう燻製肉をナイフで切り分けつつ、ラプンツェルは意味深に笑みを浮かべる。  そんな娘の予想にマリアは堪らず吹き出して声を上げての大笑い。  救国の英雄が一介の魔女――、しかも悪役に恋など、それこそロマンス小説である。 「まさか!貴女、御伽噺の読み過ぎ!唯の親切よ…!女二人暮らしと知って情けを掛けてくださってるのよ」 「え〜?そうかなぁ?」  笑い飛ばす母にラプンツェルは何だか剥れ顔。  そんな事無いと言いたげな目は、全く以て夢見る乙女である。 「でもまあ、悪い気はしないけれどねぇ」  素直な感想を述べつつ、マリアは仮縫いの終わった娘の衣装を広げる。  品のあるラベンダー色の絹衣はラプンツェルの金の髪によく似合った。
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