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「それにしてもお母さん…、まさかその服で大公様に会ってたの?」
不意にこちらを見て、娘は呆れ顔。
確かにあちこち当て布補強でツギハギだらけ。
お世辞にも綺麗な服とは言えないが、持っている服の中で一番マシなのがこれである。
文化的だったかつての世界とは違い、今生きているこの世界では衣類品はかなり貴重だ。
持ち前の魔法で衛生的には出来ていたし、村ではこの程度の粗末な服装は当たり前だったので特に気に留めていなかった。
「お母さん、次に大公様に会う時は新しく繕った服着てなね…、私が恥ずかしい」
冷めた目でそう言う娘に、マリアはニヤリと笑った。
「お?思春期発言かな?いっちょ前に来たようで」
「一般的な意見だっての!いちいち思春期、反抗期と言わないで!腹立つ!」
くわっと怒る娘に彼女は更に誂うようにニヤニヤ。
前世と違い、母と娘の質素な生活では我儘はあまり言えない状況である。
少なからず気を使わせていると思ったが、それなりに伸び伸びと成長していると感じて嬉しくなった。
「よしよし、ちゃんと大人の階段登ってるねぇ!」
「うっさい!鬱陶しい!」
縫い物を放り出し、おかん全開で娘に抱き付くもラプンツェルも思春期全開で全力拒否。
やいのやいのと絡み付き、照れ隠しに嫌がられながらその晩は賑やかに更けて行った。
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