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「ど、何処から…」
「全部…。私を引き取った日の事から全部読んだ」
その返事に、絶望さえ覚えた。
日記の一部には覚書きとして前世の記憶のことも、この世界が童話の世界であることも書き記していた。
なんてことだ―――。
その全てを知られてしまった。
「あのね…、実は私にも昔の記憶があるの」
震える手を握り、ラプンツェルは落ち着けるように告げた。
呆気に取られるマリアに、彼女は小さく溜息を吐くように深呼吸。
微かに握った手に力を込めた。
「この世界じゃない別の場所で生まれて、お父さんとお母さんに凄く愛されて…、けど旅行の帰りに事故に遭って…、傷だらけのお母さんに抱き締められて…それで死んだのを憶えてるの」
淡々と、しかし恐怖を滲ませながら、ラプンツェルはそう告白した。
間違いなく娘の前世の記憶だった。
「ララっ…」
堪らず娘を抱き寄せた。
あんな記憶を憶えていたことに―――、今世では自分が本当の娘ではないと知りながらも、一人そんな大きな秘密を二つも抱えて耐えていたことに胸が苦しくなった。
「お母さん…、お母さんは私の本当のお母さんだよ?血の繋がりなんか今は無くても、魂は…心はお母さんの娘だから…っ…」
涙に震える肩を抱き返し、ラプンツェルも涙を滲ませる。
小鳥の囀りと川のせせらぎが木霊する中、母と娘は魂の再会を果たした。
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