異星のほろぼしかた

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「あーあーやってるやってる」 東京タワーとかいう赤い塔のてっぺんで、俺は興味無くそう言った。 異星のほろぼしかた 「本当にパニックになってんじゃん」 一つ目で街を見下ろす。 煙と炎が空に昇り、悲鳴と破裂音が四つの耳に入った。 米つぶ程の人間達は殴り合ったり走り回ったり、見れたもんじゃない。 「へえ、なかなか醜い状況だねぇ」 青い翼でふよふよと浮く同期もまじまじと街の様子を観察していた。 「これだから知的生命体って厄介なんだよなあ」 「まあそこも面白いんだけどね」 まるで雑談の様に呑気に喋る。 「にしても人間とかいう生物単純過ぎない?ちょっと吹き込んだだけなのにさあ」 「まあこいつらが選んだ事態だし?」 折角事前に教えてやったのに、大統領とかいう責任者は聞く耳を持たなかったから自業自得だ。 あの対応がムカついたから、人類は滅ぼす事にした。 ただ滅ぼすのもつまらないからと、各地で心理実験で遊ぼうとなって今である。 実験対象は足り過ぎるくらい居た。 「んで、このパニックいつまで続くの?」 同期が訊いてきて、俺は肩を竦める。 悲鳴が一段と大きくなった。 炎の光より高い夜空に、俺達の母艦から放たれたミサイルが降ってくる。 流れ星みたいで綺麗だねー、と呑気なのは俺達だけだった。 いくら愉快な状態とはいえ、悲鳴も聴き飽きる。 んじゃ、戻りますか、と言って俺は夜へ歩き始めた。 「あ、ぼくはもうちょっとデータ取ってから帰るねー」 しゅるしゅると触手を二本振って同期は言う。 おけ、とだけ返して俺は母艦へ戻った。 母艦へ戻った俺はパッドに資料を書き込みながら、ミサイルが降り注ぐその青い星を見る。 人間とかいう生物さえ居なければ住みやすそうな星だ。 冷静とも取れる思考をしながら、3つめの腕は文字を打ち続けていた。
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