永遠の悲しみ

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永遠の悲しみ

 それからの毎日は、僕にとっては地獄のようだった。  君の笑顔は二度と僕に向けられることはなかった。  隣りに座る君からは、昨日までの温もりとはほど遠い冷たい拒絶の色が感じられ、僕を絶望の淵へと追い込んだ。  クラスメートの不審を買わないように必要最小限の言葉は交わしていたけど、君の目が僕を見ることは一度としてなかった。  休み時間も下校時も、君は何かと理由を付けて僕の視界から離れたし、部活でのパス練さえも君は僕を避けた。  僕は重い心を引きずりながらあの日から2週間余りを過ごし、とうとう終業式の日を迎えた。  今日こそは君に謝らなければならない。たとえこの気持ちに偽りがないにしろ、君を傷つけてしまったことは確かだ。  以前のような状態に戻りたいなんて、都合のいいことを考えているわけではない。でも、とにかく君と話をしなければ……  僕は君が登校してくるのを待った。でも、その朝君は来なかった。理由は担任から告げられた。 【転校】  僕は愕然とした。椅子に座っていてさえも、足下からガラガラと自分の体が崩れていくような感じに襲われた。  頭の奥で君の最後の言葉が殷々と響き渡り、僕の手足を雁字搦めにしていく。目眩がする……  教室の中のざわめきも、誰が何を言っているのかも、もう判別さえつかなかった。  やっと我に返った僕の耳に入ってきたのは、転校の理由を告げる担任の声だった。  君のお父さんの急な転勤。余りにも急だったために、実は転校の正式な手続きも未だ済んでいないのだと言った。  嘘だ。そんなのは嘘だ。転校の理由は、この僕だ! 僕が君を転校に追いやったんだ。僕が、君を……  君の乗る新幹線の時刻が告げられた。『残念だけど見送りは諦めなさい』と、騒ぐクラスメートたちを担任が鎮めている。  僕は時計を見た。間に合わないかもしれない……だけど!  僕は無言で教室を飛び出した。僕を引き留める担任の声が、遠く微かに響いていた。
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