春の嵐

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 教室の中は独特の雰囲気だった。    中高一貫の私立の男子校だったから、殆どが附属中学からの持ち上がり。一人でぽつんと座っているのが外部入学者だとすぐわかる。既に完成されたクラスの雰囲気が漂っていた。  僕たちが息を切らして、笑いながら教室に駆け込んだときは一斉に注目を浴びたし、かなり浮きまくっていたよね。一人だったらこの疎外感に耐えられなかったかもしれない。でも、僕の隣には君がいた。    僕たちは急に神妙な顔をして教室に入ったけど、笑いを堪えるのに必死だった。    席順は黒板に張り出されていた。出席番号順のようだった。君は自分の名前を見つけると、 「オレはここ。君は?」  そう言って自分の名前の上を指差したまま、僕に問いかけた。  君の名前は窓際から2列目の、ちょうど真ん中辺り。僕はとても嬉しかった。だって、君の名前の隣に自分の名前を見つけたから。 「僕は、ここ」 「隣りじゃん! やったー! えーっと、ナガセリン・・・・・・」 「トモヤ、永瀬倫矢(ながせともや)。よろしくね、椎名純一(しいなじゅんいち)くん」 「うん。よろしく、永瀬くん」  永瀬、椎名。僕たちは1年間こう呼び合った。  いったいどうしてだろう。他のクラスメイトたちはみんな僕のことを【トモ】と呼び、君のことを【ジュン】と呼んでいたのに。  僕たちは最後まで名前で呼び合うことはなかったね。本当は、君に名前を呼んで欲しかった。その声で『トモヤ』って、呼んで欲しかったんだよ・・・・・・
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