32人が本棚に入れています
本棚に追加
教室の中は独特の雰囲気だった。
中高一貫の私立の男子校だったから、殆どが附属中学からの持ち上がり。一人でぽつんと座っているのが外部入学者だとすぐわかる。既に完成されたクラスの雰囲気が漂っていた。
僕たちが息を切らして、笑いながら教室に駆け込んだときは一斉に注目を浴びたし、かなり浮きまくっていたよね。一人だったらこの疎外感に耐えられなかったかもしれない。でも、僕の隣には君がいた。
僕たちは急に神妙な顔をして教室に入ったけど、笑いを堪えるのに必死だった。
席順は黒板に張り出されていた。出席番号順のようだった。君は自分の名前を見つけると、
「オレはここ。君は?」
そう言って自分の名前の上を指差したまま、僕に問いかけた。
君の名前は窓際から2列目の、ちょうど真ん中辺り。僕はとても嬉しかった。だって、君の名前の隣に自分の名前を見つけたから。
「僕は、ここ」
「隣りじゃん! やったー! えーっと、ナガセリン・・・・・・」
「トモヤ、永瀬倫矢。よろしくね、椎名純一くん」
「うん。よろしく、永瀬くん」
永瀬、椎名。僕たちは1年間こう呼び合った。
いったいどうしてだろう。他のクラスメイトたちはみんな僕のことを【トモ】と呼び、君のことを【ジュン】と呼んでいたのに。
僕たちは最後まで名前で呼び合うことはなかったね。本当は、君に名前を呼んで欲しかった。その声で『トモヤ』って、呼んで欲しかったんだよ・・・・・・
最初のコメントを投稿しよう!