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目を開けて真っ先に見えたのは天井だった。ありふれた白いクロスの、それでも間違いなく俺んちと言える見慣れたやつ。
横たわるベッドも俺のだし、顔の横にはさっき放り投げたスマホもある。
意識と記憶の具合が変だ。
俺、何してたっけ。昼寝?いや、違う。やばい電話があって変質者にピンポンされて、ショックで倒れたんだ。ベッドにいるってことは何とかここまで来て休んだってこと?
妙に体がだるい。かすかな違和感に首の後ろに手をやると柔らかな瘡蓋じみたものに触れる。剥がしてみると一センチ四方のガーゼだ。なんだこれ。記憶にない。
ふらつく腕に力を込めて、なんとか起き上がると「大丈夫ですか」と声をかけられた。
誰?
驚きすぎて声が出ない。
全然知らない男がベッドの足元に立ってる。
「近藤さん、気分はどうですか。薬がまだ効いていますから、あと三十分は安静にした方が」
名前呼ばれた。全然知らない男が俺のこと知ってる。そんで全然知らない薬の話してる。
「……あの」
立ちあがろうとするとすかさずこっちに来て支えてくれる。優しい。あとスーツかっこいい。
「公安の一条と申します。先程は近藤さんがひどく混乱なさっていたので安全面から軽い鎮静剤を使わせていただきました。本当は穏便に進めるべきところ、このように不躾な訪問をご容赦ください。何分、緊急事態でして」
丁寧に頭を下げる一条さんにつられ、「あ、ども」となんとなく俺も会釈する。
「あの、体は大丈夫ですけど、状況がわからなすぎて」
「そうですよね。いずれにせよ荒唐無稽な話ですので、単刀直入に申し上げます。近藤さんは気に入られました。いや、気に入られてしまった、と言うべきか」
気に入られた。誰に?
てか、さっきこの人、公安って言った?
「近藤さんに目を止めたのは私たちの常軌からは逸脱した超常的存在、平たく言えば、神です」
神。神?
コイツ真面目な顔して何言ってんだ。
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