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「神」
「はい」
「何で」
「質問サイトで交流したでしょう」
「あの、人間捨てたいってやつですか」
「はい。近藤さんの回答がグッときたようで」
「……ええぇ」
「動揺、お察しします」
お手本のような鳩が豆鉄砲食らい顔の俺。対して一条さんは真剣だった。
いわく、ここでいう神は聖書に出てくるあの神を想像すると一番齟齬がないらしい。
神は太古の昔から存在し、人類の始祖であるアダムとイブを創って以来、人の世を見つめ、時には慈悲の雨を、あるいは恐怖の雷を人々にもたらしてきた。聖書上で子羊と称する通り、人間をか弱き存在と捉えている。
「しかし現代の我々は神の意図を超えてしまったようです」
「意図?」
「意に反して高度に進化し過ぎたのです。近藤さんはペットを飼ったことがありますか」
「はぁ、子供の頃にハムスターを飼ってました」
「では想像してみてください。滑車回してるのかわいいな、ヒマワリの種を食べるのかわいいなって眺めてたハムスターが、滑車回さなくなったかわりに株をやりだしたり、ヒマワリ欲しさに隣のハムスターと抗争しだしたらどう思いますか」
「……ひく、かも」
「さらにそのハムスターがケージを掃除したり餌をあげたりする近藤さんの苦労も知らず、自分が世界の支配者だと思い上がっているとしたら」
「イヤですね。すごいとは思うけど、こっちが好きだった可愛さはもうなくなっちゃってる」
「神も同じです」
一条さんが頷いた。関係ないけど、この人、額の形がめっちゃきれい。オールバックが超似合ってる。あの骨格に収まる脳みそはきっと優秀なんだろうな。
「そういえば公安て」
「便宜上、公安の所轄ではありますが、この件は各国と連携し協働しています。ちなみに先程、近藤さんにかかってきた電話はCIAからです」
「CIA!?」
「はい。近藤さんはつい先程、国際的な保護観察下に置かれました。神は遥か昔から人間にメッセージを送り続けてきました。しかし受け取れる人間はごくわずか。かつては丘の上や神殿で行われていた預言は今やネット上でその資格がある者の前だけにあらわれます。我々はその対象者を管理する任務をおびている」
「えっと、それは何故ですか」
「神が人間を捨てたがってるからです。さすがにおかしいと思いませんか。昨今の異常気象や新型ウィルスの流行や世界情勢の不安定さ。憂慮すべきことが多すぎる」
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