人間捨てたい

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「それは、はい」 「歴史を振り返れば、戦争や疫病など神は人類に落胆するたびに様々な試練を与え、我々はそれを何とかかわしてきました。そして今がまたその時なのです。近藤さんにはこのまま神と交流を続けていただき、なるべく人間っていいなと思わせてほしい」 「人間っていいな?」 「はい。人類存亡はあなたにかかっている」 「いや、俺、何もわかんないですよ」 「大丈夫です。あなたのその素朴さがいいんです。神はあなたの物干し竿の質問も見ました」 「見たんだ」 「タイムラグ的に確実です。その上でこの人なら、と返信された」 「神もそんなフリマサイトで取引相手見定めるみたいなのするんすね」 「ええ、見定めた上での交流ですから自信もってください」  かくして俺は質問サイトを通して神の宣託を賜るようになった。  常に一条さんやその仲間の監視下に置かれているが、俺の素朴さを守るために今までの生活を変えないように配慮されているため、実感はない。  「さっき神の質問上がったんで適当にタイミングみて答えてください」って連絡は来るけど、これも適当なタイミングってのが大事らしい。速攻で答えて「小賢しい」って思われないために。  一条さんの勧めで聖書も読んだ。  バベルの塔とは、驕り昂った人間が天まで届くバベルの塔を建築しようと上へ上へと伸ばした結果、神に塔を破壊され二度とバカな協働をしないように言語もバラバラにされた話であるとか、ノアの方舟の雨は四十日も続いたとか、何となく言葉だけ知ってたことの内容も知った。  でも知ったからといって決してそれをひけらかしてはいけない。 「相手を知ることは大事です。しかし知ったことを悟られたらいけません。知った上で、あえて近藤さんは無知でかわいいハムスターでいてください」と注意された。
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