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眼軸
「嘘をつくと鼻が伸びるだろ」
「まあ。寓話ではね」
「じゃあ何をしたら目が伸びる?」
「知らないよ」
「人間の眼軸は日々伸び続けているんだ」
「難しい話はよしてよ」
「その結果、近視になる」
「それはタメになるけど」
「なら、近視の先は?」
「ええ。失明とか?」
「そうだ。そのもっと先はどうなる」
「知らないよ」
「もうひとつの目が現れる」
「くだらない幻想は終わりにしてくれる?」
「俺はそう信じている。人間の体は人間が思っているよりも深くて謎が多い。未解明な部分だらけだ」
「今日は疲れてるんだ。帰ってもいい?」
「最後にひとつだけお願いを聞いてくれ」
「何でしょうか」
「目を伸ばし続けたその先に、新しい目があるんだと、お前も信じてくれ」
「信じるくらいならいいけど」
「そうか。ありがとうな」
「じゃあ帰るけど、君はどうするの」
「入院してる叔母の元に寄ってから帰るよ。真っ暗闇の中で戦い続けてる、その耳元に言ってくる」
「新しい目が現れるって?」
「ああ。だから諦めるな、って」
「そうだね。生きてる限りは現実だしね」
「俺たちは、寓話の世界で生きてないからな」
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