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私が焦ってわたわたしている間にも、青年はこちらに向かって走ってきている。
「わわわ、私は怪しいものじゃありませんよーー!」
そう言っている時点で十分怪しいことは自覚しているが、他に弁明の言葉が思いつかなかった。
ふくらはぎの位置まで濡れてしまうにも関わらず、青年は躊躇いもなく浅瀬に足を突っ込んでこちらに向かってくる。
青年の騎士のような格好が、ブーツが濡れる。
やめてー!
来ないでー!
「ごごご、ごめんなさいいい!」
私は思わず石像にしがみついて、意味もなく謝罪の言葉を口にする。
そんな間抜けな私の姿を気にする様子もなく、私の前までたどり着いた青年は何故か跪いた。
「よくぞおいでくださいました、神子様。あなたのことは、命にかえても俺がお守りいたします」
「……へっ?」
あまりに想定外な事態に、私はキョトンとしてしまう。
だってそうでしょ、いきなり現れた人が跪いてきたら誰だってびっくりするでしょ?
というか、神子様? 何を言われているのか意味がわからない。
それよりあなた、誰ですかーー!?
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