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目の前のジェラルドさんは、噛み締めるように私の名前を何度も呟く。
「タチバナ、アオイ……。タチバナアオイ様……。さすが異世界から来られた方ですね。響きが独特だ」
うん、でしょうね。
私だって、ニコラスさんにしてもジェラルドさんにしても、名前の響きが外人さんにしか思えないから。なぜか、バリバリ日本語で会話が通じているのが不思議ではあるけど。
「では、タチバナアオイ様とお呼びいたしますね」
いや、フルネームで様付け⁉︎
恥ずかしい!
「あ、葵が下の名前なんで、できればそっちだけでお願いします。ジェラルドさん……」
なんかもう、非現実すぎてどうでも良くなってきた。
もうこれ、夢でしょ?
むしろ夢じゃないと受け入れきれない。
半ばやけ気味に訂正すると、ジェラルドさんはなるほどと頷いた。
「わかりました。アオイ様ですね」
やっぱやめて、恥ずかしい。
こんなイケメンに様付けされる経験なんて、当然ながら生まれて初めてでどうにもこうにもいたたまれない。
「神殿騎士の名にかけて、アオイ様の御身は俺が必ずお守りいたします」
ジェラルドさんはスッとその場に跪く。そして私の手をすくい上げると……私の手の甲にキスを落とした。
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