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6・騎士様と二人①
え? キス?
跪いて私の手の甲に口付けるジェラルドさんの姿は、さながらお姫様に忠誠を誓うおとぎ話の騎士のようで……。ってちょっと待って、理解が追いつかない。
「は、え、ちょっ、ジェラルドさんっ⁉︎」
非常に情けないことに、私の口からは混乱して慌てふためくものしか出ない。
しかしジェラルドさんは私の素っ頓狂な声を気にする素振りもなく、元の立ち姿に戻る。ゆったりとした仕草で自身の胸に片手を当てると軽く微笑んだ。
「どうぞ、俺のことはジェラルドと呼び捨ててください。神子様」
「ああ、私のこともニコラスと呼び捨てていただいて構いません」
「い、いやいやいや……」
16の小娘が、自分より明らかに年上の男性を呼び捨てにするなどかなり無理がある。
しかも初対面。きつい。
しかし、男性二人は私が呼び捨てにすることになんの抵抗もないようだった。むしろ、さん付けする方がおかしいとでも言いたそう。
「どうか、お願いいたします」
「あ、う……ジェラルド、ニコラス?」
ジェラルドの有無を言わさない雰囲気に押されて、私は絞り出すように二人の名前を口にした。
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