6・騎士様と二人①

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 もう、やけだ。  あとは野となれ山となれ。 「はい」  ジェラルドが嬉しそうに返事をする。  まるで、主人に名前を呼ばれた犬のようだと思った。  って、明らかに自分より年上の男性に対してこの表現は失礼な気がするけれど。 「ニコラス様、お話中のところ失礼いたします」    第三者の声が割り込んできてそちらの方へ視線を向ければ、この祭壇(?)のような部屋の入口に屈強な体躯(たいく)の男が一人立っていた。  房飾りのついた上着にブーツといった、ジェラルドと似た服装をしている。この人も神殿騎士だろうか。 「どうかしましたか?」 「研究者の方がお見えです。ルーチェ神のことで急ぎ話があると……」  ……ルーチェ神?  それって、あのおかしな神様のこと?  ニコラスと騎士の男性の会話から漏れ聞こえてきた言葉に、私は少し首を傾げた。  あの神様に関する急ぎの話。  ニコラスの雰囲気が少し固いものに変わったように思う。あまり良い話ではない気がするのは、私の気のせいだろうか。   「そうですか……分かりました。すぐに行きます」
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