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「今のあなたにこの間の話をする必要はないかもしれないけど……。一応伝えておくわね。不安になってほしくないから」
そう前置きを置いて、エルミナさんは伏し目がちに口を開いた。
「確かに私はジェラルド様の元婚約者候補ではあったのよ。だけど、とっくの昔にジェラルドによってなかったことにされているわ。だから、私とあの人は、ただの古い知り合いってところ。恋愛感情があったこともないわ」
エルミナさんとジェラルドの関係について、ずっと気にはなっていた。
きっと二人の間には、エルミナさんの言葉以上に複雑なものがあったのだろうと推測できる。
だが、本人が話さないでいてくれているのに、それに聞き出そうとするのは野暮と言うものだ。
と、真面目に考えていたのに……。
「そもそも私の男性の好みは、もっと筋肉があって、黒々としている方なのよね……」
憂いを帯びた表情で放たれたエルミナさんの言葉に、思わず脱力してしまった。
それって、エルミナさんの好みの男性はマッチョってこと……?
「ええ……」
意外だ……。
「ほら見てアオイちゃん、あの庭を手入れされている方、素敵だと思わない?」
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