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そう言うとニコラスは、部屋の中央にある浅瀬の水場へ躊躇なく入っていく。
神様の石像の前で足を止めると、その場で両膝をついた。
ここからでは聞き取れないが、何か呪文のようなものを口にしていることだけはわかる。
「見よう見真似で大丈夫ですよ。神子様は我々とは異なり、神に選ばれたお方なのですから」
隣にいるジェラルドが私を励ますように言ってくれる。だが、申し訳ない。私はうっかり神様にぶつかられただけで、そんな大層な人間じゃないはずだ。
でも……。
私は神様から力を託された。
願いを託された。
私に出来ることがあるはずなのだ。
ジェラルドは入口を見張るためか、私たちから離れていく。
私は水場の手前までいくと、ニコラスの姿を真似て両膝をついた。
目を閉じ、両手を組みあわせて、ただ祈る。
雨が止んで、国王様が見つかりますように。
そして、神様の力を取り戻せますように……と。
その時だった。
上階の方から、なにやら騒がしい声が聞こえてきたのは。
「う、うわああぁっ!」
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