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65・神子の祈り
「国王様、どうしてここに……」
兵士や神殿騎士たちが探しているはずの人が、どうしてここにいるのだろう。
「お前を探していたのだがな。追っ手がなかなかに多くて、対処に苦労した……」
対処、とはどういうことなのだろうか。
国王様を探していた神殿騎士たちは無事なのだろうか。
「神子様、私の後ろに」
いつの間にか水場から上がってきたらしいニコラスが私のそばに来ていた。
ぐいと腕を引っ張られて、ニコラスの背に隠される形になる。
「陛下! お戻りください……!」
上階から兵士と思われる人が駆け下りてきて、国王様に声をかけた。
だが、国王様が杖をひと振りするだけで、兵士が吹っ飛んでいく。
「……っ」
前に会った時よりも、国王様の感情が荒ぶっているような気がする。
国王様の周囲に黒く澱んだ気配がまとわりついていて、なんだか見ているだけで胸が苦しい。
――これ、もしかして……神様の力に乗っ取られかけてるんじゃ……?
嫌な考えが私の頭を過ぎる。
国王様はゆったりとした足取りで、こちらへゆっくり近づいてくる。
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