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――こんなの嫌だ!
腹違いとはいえ兄弟が憎みあったままなんて嫌だし、ジェラルドが傷つけられるのはもっと嫌だ!
あの杖さえ壊せれば……!
『使えばいい。僕の力を』
神様の声が、再び聞こえる。
ただし姿は見えない。
声は、私の体の中から響いてくるようだった。
『君が祈れば、僕は応えよう』
私は神様の言葉に導かれるようにして、強く願う。
「お願い神様! 杖を壊して――!!」
私が叫ぶと同時に、私の胸の奥から杖に向かって白い光が走っていくのがわかった。
光は一直線に国王様の持つ杖へと向かっていく。
やがて白い光は、杖にはまっていた赤い宝石を粉々に打ち砕いた。
「陛下……!」
宝石が砕けるとともに、意識を失ったのか国王様が膝から崩れ落ちる。
「おい! 雨が止んだぞ……!」
「アオイ様、ご無事ですか……!」
上階から響いてくる兵士たちの声とジェラルドがこちらに駆け寄ってくる足音を聞きながら、私は自分の意識が遠くなるのを感じていた。
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