138人が本棚に入れています
本棚に追加
私は一人、神様の石像と水辺を挟んで向き合っていた。
水辺の手前に体育座りをして、神様の石像を見上げる。
私が目覚めた翌日の夜に一度現れたきり、神様が私の夢の中や現実の空間に姿を見せることはなくなった。
だが、この地下祭壇は特別なようで、姿は見えないが話はできるようだった。
『本当にいいのか……?』
ぼう、と神様の声が石壁に反射する。
私は神様の言葉に頷いた。
「うん」
『この機会を逃したら、帰れる保証はないんだぞ?』
私の体の中に貯められていた力は、国王様の杖を壊すためにすべてを使った。私の体には、もう神様の力は残っていない。
杖の中に奪われていた神様の力は、無事に神様の元へ戻っていった。
神様が力を取り戻した結果、同化していた私と分離が始まったらしい。
その結果、私が神様の姿を捉えることが出来なくなったそうだ。
まぁ、私は霊力も何もないただの一般人だから当然と言えば当然のことではある。
弱っていても力が戻っても自由に話せなくなるとは、なかなか難儀な神様だ。
最初のコメントを投稿しよう!